安楽死と自殺幇助の双方が認められた世界で3番目の国
スペインの国会で安楽死(尊厳死)の法律が可決されました。3ヵ月後の、2021年6月から施行されます。
世界で安楽死を合法化している国としては6か国目ですが、ルクセンブルグ、カナダ、コロンビアでは安楽死のみが合法で、自殺幇助は含まれせん。
尊厳死も自殺幇助も合法化するのはオランダ、ベルギーに次いで、世界で3か国目となります。
ポルトガルでは最近、安楽死が違憲であるとの判決が最高裁判所から出されました。
スペインでの安楽死を申請する条件とは?
・18歳以上であること
・回復の見込みがない、深刻な病気にかかっているか、長期に渡り体に障害や苦痛があり、自分で自立した生活ができず、耐えがたい身体的苦痛もしくは精神的苦痛を常に受けていること
・スペイン国籍を持つか、スペインの合法的在住者か、12か月以上スペインに在住していることを示す住民票があること
・申請の時点で、自分で判断ができる状態であること
スペインでの安楽死の、手続きの流れは?
手続きは簡単ではありません。次のような流れになります。
【2度の自己表明】
・尊厳死を望む人は、自分の意志と文書によって、2度文書を提出しなければならない。1度目と2度目は少なくとも15日以上の期間をあけること。
この15日間は、患者が自分の意志を表現できない可能性に迫られた場合に限り、医師が期間を短くすることができる。
文を書くことが不可能な場合は違う方法で可能。
・外部からのいかなり圧力も受けてないことが明らかでなければならない。
・申請をして認められる場合には5週間後に実行できるが、その間、申請者はいつでも中止にできるし、期間を延長できる。
【医師との話し合い】
・最初の申請後、担当医は患者と、病状や診断、緩和エアの可能性などについて患者が理解できるような説明で、話をする。その上で、意志に変わりがないかの確認する。
【別の医師の判断】
・2度目の申請の後も、担当医は患者と新しい話し合いを持たなくてはいけない。担当医は自分の医療チームとは別の、同じ病気の専門医に相談しなければならない。
相談された医師は10日間のうちに、条件を満たしているかなどを確認し、文書を提出する。ここで、却下という判断がされる場合もある。
【委員会の判断】
・承認された場合、今度は評価委員会へまわる。委員会はスペインのすべての自治州・自治都市に1つあり、その構成メンバーは自治州・自治都市が決定する。
・委員会は2日以内に二人の専門家(一人が医者で、一人が法学者)に条件を満たしているかの調査を依頼し、
7日以内に報告書を提出する。専門家二人とも同意した場合は、進める運びとなる。もしもふたりの意見が合わなければ委員会が判断する。
・最終決断はこの委員会の委員長に提出され、委員長から安楽死を行う医療関係者に伝えられる。
【医師も断る権利がある】
・医師にとって安楽死への行為は義務ではなく、事前に文書で表明すれば、良心的拒否の権利がある。
却下された場合は?
・もし医師から不承認を伝えられた場合、患者は調査委員会へ訴えることができる。もしも調査委員会から不承認が伝えられた場合、訴訟に持ち込むことができる。
どのような方法の死なのか?
申請者はどのような形か選ぶ権利があります。
・医者に物質を投与してもらう
・医者に処方箋を書いてもらうか、物質を供与してもらい、自分で行動に移す
・場所は公立・私立問わずスペインの医療システム内の病院で可能である。患者の自宅でも可能。
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●新聞記事は1つでは情報が不十分だったため、
Mundo deportivo記事と、
EL Confidencial記事と、
EL DIario記事より、一部を抜粋し、翻訳しました。(2021年3月22日)
●世界で何番目に安楽死の法律ができたか?の記事で、スペインではいつもスイスが含まれません。日本の報道ではスイスは安楽死を合法化していると出てきますが、スペインのニュースでは、
スイスは安楽死を認めているわけではなく、 自殺ほう助が認められている国(死を選ぶのは本人)という扱いです。
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●安楽死の話題が高まっていますが、先日、スペイン人友が、ほとんど体が動かないが絵を描いてる方と知り合い、自分は生きたいという気持ちに満ち溢れていると笑い、逆に元気を与えてくれたそうです。
生きる権利と死ぬ権利について考える今日この頃です...。